昔の戸籍は族称記載がれていたことはご存じですか?

 

現在では族称は記載されていません。

しかし、僅かな残りから推測出来ることも可能です。

基本的に

 

明治19年戸籍

 

明治31年戸籍

 

大正4年戸籍

 

に記載されていました。

戸籍の歴史「明治5年の壬申戸籍から平成6年版戸籍まで」

昔の戸籍には族称が記載されていた

 

※ただし明治19年戸籍と明治31年戸籍と大正4年式には表記の方法が違います。

 

詳しく説明すると、明治19年戸籍は戸籍の本文の部分と右の端部分に記載されていました。

 

画像で示すとこのようになります。

 

明治19年戸籍の場合

ここに平民か士族(場合によっては華族)が記載されていました。

 

実際の記載としてはこのような感じになります。

戸籍を取得した時にはそんな知識がありませんでしたので、何の疑問も持っていませんでしたが、その事実を知るとなるほどを思った次第です。

 

 

明治31年戸籍の場合

 

前戸主トノ続柄の前に1つ空白がありますが、その部分が族称の記入になっていました。

 

※旧字体で称は「偁」で記載。

 

こちらも気にしなければ何も違和感が無いような空白ですが、実はそこに身分記載の欄がありました。

 

平民や士族(華族)の記載がありました。

 

ただし、明治5年当時華族の戸主は459家(前戸主の0.00805%)しかいませんので、当時でも「華族」という記載があった戸籍はほぼ有りません。

 

しかも、塗抹処理をされた現代でその記載がある戸籍が存在していることはほぼ無いと思われます。

 

もしあるとすれば、華族の家で戦前に家督相続等で取得した戸籍を子孫が大切に保管したという特殊な場合だと思います。

 

 

大正4年戸籍の場合

 

大正4年戸籍でも前戸主トノ続柄の前に空白があり、そこに族称を記入する欄がありました。

 

ただし、族称の記載方法が改められたようです。

 

華族士族平民から華族士族のみの記載となり平民は記載しないことになりました。

 

※上記の戸籍は平民の戸籍ですが便宜上「士族」で記載しています。

 

国立国会図書館デジタルコレクションにも大正4年戸籍の表記方法が載っています。

 

このように戦前の戸籍には身分記載がありました。

 

しかし現在、身分記載はされておりません。

 

それは昭和43年を境に全ての身分記載を塗抹したからです。

 

では昭和43年に何が起こったかというと、壬申戸籍の閲覧不可がおこりました。

 

ウィキペディアからの引用によると以下の記載があります。

昭和43年、被差別部落民かどうかを探り出すためにこの戸籍が用いられようとした事件が発覚し、同年3月29日民事局長通達により閲覧禁止とし、法的な廃棄手続きを経たものは法務局・地方法務局・市町村のいずれかにて厳重に包装封印して保管することになった

昭和四三年三月四日付民事甲第三七三号民事局長通達

昭和四三年三月二九日付民事甲第七七七号民事局長通達

 

このような事があり、昭和43年以降、戸籍から身分記載の部分を塗抹して交付するようになりました。

 

戸籍係の作業は膨大だったと思われます。

 

しかし、日本の戸籍係の丁寧さは流石です。

 

現在の戸籍を確認しても塗抹されたところは全くの空白になっており、現在ではどうみてもその部分から身分記載を読み取ることは不可能です。

 

実際の戸籍を見てみましょう。

この身分記載のある戸籍は昭和43年以前に相続の時に取得した戸籍で、まだ身分記載があった戸籍になります。

 

全く分からない程、綺麗に塗抹されています。

 

これでは、どこをどう見ても分かりません。

しかし、戸籍係も人間です。

 

塗抹が完全ではない戸籍もあります。

 

では、どうすれば分かるかというと、塗抹漏れと漢字からイメージして「平民」「士族」を判断します。

まずは「士族」の「士」と「平民」の「平」で確認してみましょう。

 

「士」の塗抹漏れがあるとすれば、上にポツンと点が残る可能性があります。

 

しかし「平民」の「平」の場合はまだ下の文字である「民」がありますので綺麗に塗られて空白になります。

 

万が一、空白の部分で中央に点のようなものがあれば気にしても良いでしょう。

 

次に下の文字である「族」と「民」です。

 

「士族」の「族」の場合。

 

●士族は塗抹処理不足の時には下の点が4つになる。

 

●士族の「族」は点の間隔が狭い。

 

「平民」の「民」の場合。

 

●平民は塗抹処理不足の時には点が2つしかない。

 

●平民の「民」は点の間隔が広い。

 

このような判断になります。

 

もっと簡単なイメージとして残っている部分が「士族」の場合はカタカタの「ノ」ような雰囲気になり、「平民」の場合はカタカナの「レ」のような雰囲気になります。

 

このようなイメージで戸籍に穴が開くまで見ていくと、ひょっとしたらこれは士族の記載では?平民の記載では?と判断できるものが自分の持っている戸籍で存在しているかもしれません。

 

具体的にはこんなイメージです。

 

 

 

この戸籍の赤丸と青丸を確認して下さい、何か塗抹漏れの雰囲気が漂います。

 

しかも、なんとなく「レ」のような感じもします。

 

きっと「平民」という記載があったのではないでしょうか?

 

実はこの身分記載がある戸籍を持っています。

 

では、どの部分だったか確認してみましょう。

 

 

この赤丸と青丸の部分が該当部分になります。

 

この知識が有ると無いとでは戸籍の見方が全く変わってきます。

 

戸籍に付いた汚れだと思うか、身分記載の残欠だと思うかで全く違う違う世界を見ることになります。

 

塗抹漏れの傾向として、戸籍係の文字が勢い余って「下の文字の位置と同じ位置」「下の文字に食い込んでいる場合」に塗抹仕切れずに残る場合が多いです。

 

ただし本当に分からない場合も多いのも事実です。

この戸籍の赤枠から判断するに、塗抹漏れの可能性があります。

 

この家は平民ですので空白の部分は平民の記載になります。

 

ただし、この空白を確認しても「民」の塗抹漏れには見えない気がします。

 

まあ、それも含めて、空白のところに何が記載されていたのか?を調査することも楽しい先祖探しになります。

 

このような、戸籍の僅かな残存から先祖の事について深掘りする事も可能ですし、想いをはせる事も出来ます。

 

 

更に、現代でも請求した戸籍に塗抹処理をしていない身分記載のある戸籍を交付される場合があります。

 

これは、完全に漏れている事例です、特殊な事例になります。

 

これらの戸籍は1系統だけではサンプルも少なく、発見出来ないかもしれません。

 

多くの直系尊属の戸籍を見て確認するればより目も養われていくと思います。

先祖探し:自家ではなく直系尊属全ての家を調べてみませんか?

 

【まとめ】

●戦前の戸籍には身分記載があった。

 

●昭和43年までは身分記載のある戸籍で交付されていたが、それ以降は塗抹処理を行い分からない状態で交付されるようになった。

 

●現在でも塗抹処理仕切れずに僅かな残欠をみることができる。

 

●更にごく稀にそもそも身分記載の塗抹漏れでしっかりと記載されているものも存在する。

 

公開日2020/08/02

更新日2021/09/12

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