はじめに
よくこのような伝承を聞いたことはありませんか?
代々農家なのに、「自分のじいさんの話では、昔は武士であった」とか
「おばあさんは世が世であればお姫様であった」とか
「あそこに行くのに自分の土地以外を歩かないで行った」など
または、「村一番の分限者であった」「天皇の侍従であった」など。
普通に考えれば噓だろうな、と思うのではないでしょうか?
しかし、伝承をバカにしてはいけません!!!!
その伝承の中に真実が隠れていることも多いです。
例えば、「自分のじいさんの話では、昔は武士であった」は江戸時代のことでは無く、戦国時代のことかもしれません、戦に敗れて帰農したために代々農家であったが、500年遡ると、実はこの地域の地侍だったかもしれません。
この場合、市町村史の中世や近世を確認することで、自分と同じ姓の地侍が先祖と同じ(または近隣)にいたかもしれません、そうなると、この地侍に由来する家系かもしれません。
日本歴史地名大系が役に立つ場合があります。
また、城主であったとの伝承があれば、その城の事について調べてみると何か発見があるかもしれません。
その場合は日本城郭大系が便利です。
例えば
「おばあさんは世が世であればお姫様であった」であれば
以下の理由が考えられます。
●戦国時代以前の国衆以上などで本当にお姫様であった。
●江戸時代以降の藩主の娘であった。
●江戸時代は農家であったが、多くの田畑を持ち裕福な家であった。
●江戸時代は商家であったが、羽振りがよかった。
など
「あそこに行くのに自分の土地以外を歩かないで行った」であれば、4~5代前は相当の分限者で何町歩の土地を持っていた可能性だってあります。
※このような場合は旧土地台帳を確認すれば明治時代の土地の所有者が判明できます。
「天皇の侍従であった」であればひょっとしたら、近衛兵のことを指しているかもしれません。
この様に、話を全て鵜呑みにすることなく、その伝承の中にある真実はなのか?を探ることも、先祖探しの至福の時でしょう。
年月が経過すると、得てして尾ひれがつくものです、ましてや数百年も経過したら尾ひれだらけだと思います。
自分の中で仮説を立てて、どこのが真実なのか?どこが噓なのか?を見極める、そして何故尾ひれがついたのかを検証してみることで、先祖探しも深耕できると思います。
うちの家は伝承なんてないよ、という家もあります、そんな時には本家があれば確認してみましょう、驚くような伝承が残っているかもしれません。
大きな伝承でなくてもいい
上記のような大きな伝承で無くても構いません。
私の家の伝承では「高祖父が天秤棒を担いで当村きている時に若い娘といい仲になり子どもが出来て土着した」とありました。
こんな伝承でも
●元々高祖父が住んでいた村と現在の村はどのようなルートで往来していたのか?
●江戸時代の天秤棒で売っていたものはどのようなものか?
●結婚した家はどのような家だったのか?
1700年代に亡くなったお墓(高祖父が結婚した妻の実家)
●結婚後は他の場所からきたので纏まった土地が無いなかで、どのように生活基盤を作っていったのか?
など考えられます。
伝承から考えることが楽しい
また別の伝承では「江戸時代は庄屋であった」とありました。
この場合は
●市町村史や江戸時代の地誌などにそのような記述がないか?
●地元のお寺や神社などに釣り鐘や鳥居などを寄進していないか?
●庄屋であった年代は?そのころのこの村の情勢は?飢饉などはなかったのか?
●庄屋ということは、その前の戦国時代にはこの地域の地侍やその家臣だった可能性はないか?
●戦国時代のこの地域の勢力分布図は?
●城跡や八幡神社などは現存しているか?
●婚姻関係からの調査で広がらないか?
このような可能性が広がります。
それはさながら歴史探偵のようなものです。
1つ1つは小さな断片であっても、それらを詳細に調べ上げることで、全体像が浮かび上がってきます。
それは、どこにも無い自分だけが作成した唯一無二の資料になります。
後世の子孫には貴重な生きた資料になります!!
【まとめ】
●伝承があればどんな細かなことでもまずはメモをする。
●伝承のなかでどこが真実か?どこが誇張されているか?を調べていく。
●誇張されている部分にも真実が隠されている場合がある。
●1つ1つの伝承をつなぎ合わせることで真実を浮かび上がらせることが出来る。
●それらを詳細に纏めておけば後世に1級資料として生きたものになる。
公開日2019/05/30
更新日2021/07/10