過去帳について
過去帳には2種類あります、一つは家々で管理している過去帳ともう一つはお寺で管理している過去帳です。
過去帳とは先祖の亡くなった名前、享年、行年、戒名などが記された書物です。ただ地域や宗派によって戒名と行年だけしかなかったりと千差万別です。
自宅の過去帳の場合は上記の画像のようなものがあると思われます、基本的には戒名(法名)と没年月日の記載があり、俗名や続柄が記載されている場合があります。
過去帳がある家は少ないかもしれませんが、逆に先祖調査を行い、位牌やお墓の調査で詳しいことが分れば、分っている一番古い先祖から最近亡くなった先祖までを自分で作成するのも可能になります。
祖父が分家したので、初代が祖父からという家でも本家に行けばそれより前の先祖の方も記載することも可能ですし、選択肢の幅は広がります。
位牌について
位牌はもともと中国の儒教が起源で日本には鎌倉、室町時代に禅宗と一緒に伝えられたようです。始めは皇族や将軍が使用していました。現在のように一般化したのは江戸の中期ですが、その頃使用できたのは相当に裕福な家のみでした。庶民が持てるようになるのは、江戸時代後期になってからです。
位牌には色々な形があり、その形で時代を特定することもできるそうです。位牌には、戒名(法名)、俗名、没年、享年が記載されていますが、記載もれも多いです。
宗派によっては、俗名(法名)が書き込まれていないことがあります。詳しく調べてみましょう。
(例えば、浄土真宗では亡くなった人は全て仏になると説かれており、そこから「亡くなったらみな仏になるから生前の名前は必要ない」という俗名軽視になり、俗名が書き込まれていない事があるようです)
位牌にも色々な種類があります。新しい位牌は(明治以降)一人一人の位牌があり立派なものがほとんどですが、江戸時代の位牌は少し違います。庶民は江戸時代以前はみんなが同じ位牌の中に入っていました。
※繰り出し位牌といいます。
イメージとしては屋根型の位牌ケースです。その屋根がとれるようになっておりその中に木の板が7~8枚入る作りで1枚1枚の木板が位牌です。木板ですので粗末なものです。表裏書いてあるので注意してください。
先祖調査をしていくうちで一番大切なものが位牌です。
なぜならば、位牌は家で管理するため、お墓の様に経年劣化をすることが少なく、また引っ越しをした場合でも一緒に持ってくるからです。
明治以降の墓はたくさんありますが、江戸時代の墓はあったとしても自然石ですので個人の名前や没年がなく、祭られているのが誰だかわからない状態が数多くあります。
しかし、位牌は家が火災でなくならない限り、大抵残っているものです。この位牌で数代前に遡ることが可能です。
また、江戸時代のものは草書で書かれていることが多く、素人目に字が判読できなくなってきます。
そんなときはデジカメ撮影後、分かる人物にみてもらうという手もあります。(図書館の中の古文書館の方に聞いてみると分かるかもしれません)
江戸時代の繰り出し位牌
※先祖探しで仏壇を確認したら必ずこのような位牌があるかの確認を必要です、家の方はこの木片が重要なものとという認識がありません、しかし、実はこの位牌が今後の先祖を発見できるための重要なデータとなります。
現在の位牌
戦後、高度経済成長の後に生活に余裕が出てくるようになり、このような位牌が仏壇の中に収まるようになってきました、親戚のお宅に伺っても位牌を確認させて欲しい旨を伝えると、このような位牌を見せて頂けることがありますが、比較的新しい先祖の位牌となっております。
しかし、戒名や没年などを記載したものになりますので、必ずこのような位牌もしっかりと、画像を撮って帰ることをお勧めします。
お墓について
古代の墓は遺体を埋めた場所に手ごろな石をおいて、埋葬の目印にしただけでした。
鎌倉、室町時代になってようやく墓石の習慣が貴族や豪族の間に広まりました。
墓石建立が一般化したのは江戸時代に入ってから、しかも、武士や裕福な町人、郷士や庄屋等で、庶民は長い間、河原石を積んだ程度でした。庶民も墓を作るようになったのは江戸時代後期(1800年代)からです。宗派の違いや地域的に材質にも特徴があるようです。
宝塔や層塔は平安初期に始まり、鎌倉、室町初期にも見られます。
五輪塔は平安初期から鎌倉におこっていますが、江戸期の大名や旗本もこの形が多いようです。卵塔は僧侶の墓です。
一般的にわれわれの先祖の墓は方柱形です。
墓地内に古い墓石をとり除いて一角に積んでいることがあります。これは新しい合同の墓を作り古い墓石を取り除いた為です。
場合によっては、この取り除かれた古い墓を調べる事があります。墓に彫られている字を、よく見て、もれなく写してください。
新しい墓では省略して彫っていない部分を見つけることが結構あります。
そして、墓の調査前と調査後には必ず手をあわせ、先祖供養をしましょう。
又、自分の家近くの墓ならば、盆や彼岸など墓参りをする機会に、ちょっと調査するのもいいでしょう。
墓に着いたらまず、お墓に手を合わせて供養し、墓の調査のお断りをしましょう。
そして、戸籍に載っている先祖、家の過去帳に載っている先祖の墓を一つ一つ丁寧に見ていきます。
特に、家の過去帳に載っている墓(戸籍より古い先祖)は家の過去帳に記載されてない事項(没年や享年、俗名など)が墓石に彫られている場合がありますので、よく目を凝らして見てみましょう。
例:家の過去帳に文化7年○○禅定門と記載。○○禅定門の墓には、文化7年6月24日 喜作 54才とある。
見難い時には、拓本を採るという方法もありますが、関係者の許可を必ず取りましょう。
江戸時代は、幕府が庶民に墓を作る事を勧めていなかった為、初期、中期はそこら辺の少し大きな石を目印にしたぐらいで、何も彫ってありませんでした。地方によってはノズラと言われています。
時代が下って1750年代頃になると、少し裕福な庶民は墓を作るようになりました。
一般的に江戸時代の墓石は石そのものが硬くないので、風化して文字が読めないものも多いです。
風化と同時に、苔むしている墓もあり、その時は苔を丁寧に除去してから調査しましょう。
そうやって、墓石に彫ってある文字を一つ一つ読み取って、全て書き取ります。
また、墓所内での墓石の位置をノートに記録しておいて下さい。次回の調査が楽になります。
※基本的に1回の調査で全てを完全に把握することは出来ません、何回も行き、読めない字が太陽の角度ど日差しで確認出来ることもあります。
写真も必ず撮っておきましょう。
墓石に彫ってあるものは全て記録して帰って下さい。過去帳を持っている家は意外と少なく、あったとしても明治以後の比較的新しいものです。
そこで、墓石が重要になってきます。墓石に彫られているものを全て記録して、年代別に整理しておき、後日、菩提寺の過去帳を見せて頂く際に合わせて見ると、スムーズに見られます。お寺さんもスムーズに検索しやすいでしょう。
さらに、墓石が複数ある場合、それぞれの位置関係で古さや親子関係が推測できます。
例:一番左のAの墓が1770年没と彫刻、隣のBには没年が彫ってなかった。
そのまた隣のCの墓の没年が1830年と彫ってあれば、おそらくBは1800年頃に亡くなったのではないかと推測出来ます。一世代は大体30年(多少誤差はあります)そうなるとAの子供がBでBの子供がCと推測出来ます。
お墓ではありませんが、神社やお寺の境内の玉垣の石柱に先祖の名前があることも見受けられます。
これも先祖が地域とどのように関わってきたのかを垣間見る一例ですので、一度調べることをお勧めします。
墓石を調査するにあたって、付録の墓地調査票を使ってみて下さい。デジカメも携行しましょう。
お墓には月を示す文字が彫っていますが現代とは違う名称も多くあります
例えば1月は正月 1日は遡日 11日は拾壱日 21日は廿壱日 31日は丗壱日などです
その他閏月などもありました。
このようなお墓の場合一回の調査ではなかなか全てを調査出来ない可能性もありますので、何回も伺うことが必要になる場合もあります。
遠方で度々行けない場合は、出来るだけ多くの時間を割けるように時間配分をしましょう。