はじめに
旧土地台帳から先祖を調べるレアなケースの説明です。
既存の旧土地台帳の役割としては以下のことが上げられます。
●戸籍を補完する資料として使用。
●戦災で戸籍が焼失している場合稀に世代を遡れることができる。
●土地所有者の変遷。
●土地所有者の場合はその面積、田畑の割合、どの位税金を支払っているか?
●村における一族の所有面積。
●小字の調査。
土地台帳と言われるくらいですので、土地所有や税に関するものです。
ごく稀に戦災や火事などで戸籍が焼失している場合。
80年廃棄(2010年から150年廃棄)で明治19年戸籍、明治31年戸籍は役場で廃棄されており古い先祖が遡れない場合に、旧土地台帳が明治中期から記載されていることがあり、戸籍で判明出来ない先祖が1世代位判明することがあります。
しかしこれは稀な事例です!!
仮に大正4年戸籍でもその父親は記載されていますのでその父親は明治19年戸籍の戸主だった可能性が高いからです。
なので、父親が記載されていないことは稀な事例と考えられます。
しかし、旧土地台帳を有効活用できる事例があります。
以下の方法はかなりレアなケースとして確認して頂ければと思います。
基本的に戸籍を遡っていく場合は役場にて遡って頂けます。
しかし、極稀に戸籍があるのに交付却下になることがあります!!
理由は関係が不明やそもそも請求された戸籍がないと拒む例です。
戸籍があるのにも関わらずです!!
この場合は、役場の担当者の能力や判断になってきます。
通常の役場では交付可能な戸籍でも稀に交付不可になることもあります。
※他の多くの役場で交付された事例にもかかわらずです。
今回はこの交付不可の戸籍を、旧土地台帳を利用して請求した事例について述べます。
かなり特殊な事例ですので全ての方に通じるノウハウではありませんが、逆に請求可能にもかかわらず融通の利かない役場に当たった場合の理論武装でこんな方法もあるのか!と思って頂ければ幸いです。
事例1
まず戸籍請求で山田市郎が戸主の戸籍が手に入りました。
通常であれば次に山田三喜蔵が戸主の戸籍を請求します。
しかし、山田三喜蔵の戸籍は古い為ありませんとのことでした。
次に妻であるサトの親である野本三郎の戸籍を請求します。
しかし、役場から「交付不可」との連絡がありました。
サトは明治15年生まれから判断するにその両親はまだ生存している可能性が高いです。
しかし、交付出来ないとは腑に落ちません。
戸主が不明でも調べてくれて、その戸主の母親が記載している戸籍を交付していただけます。
以下は一般的な母親記載が戸籍に無い場合の方法です。
しかし、役場に確認したところ、野本三郎の戸籍はないと連絡ありました。
三郎は亡くなっていても妻のクマが記載されている戸籍は存在しているのではないか?
探していただけないか?
家督相続者の戸籍に入っていないか?
とその旨を伝えても完全に続柄が確認出来ない為、交付が出来ない旨が伝えられました。
本来であれば戦前の戸籍でその関係が記載されていない戸籍の場合は役場にて調査して交付するのが筋ですが、融通の利かない役場でしたら、「交付不可」という一般論で片付けられます。
これは役場の考え方によって違います。
※本来それが問題ですが。
そこで旧土地台帳の出番です!!
まず、野本三郎が記載されている旧土地台帳を入手します。
ここで野本三郎が野本亀吉から相続していることになります。
野本三郎の父親が亀吉の可能性が高いと思われます。
これは旧土地台帳で遡って先祖が発見できる一例です。
今回はこちらに着眼するのではなく、息子の野本誠二に着眼します。
旧土地台帳から野本三郎の息子は野本誠二ということが判明しました。
つまり、戸主が野本誠二の戸籍の中に母親である「クマ」が記載されている可能性が高いことが判明。
そこで、旧土地台帳のコピーを同封して戸籍係に戸主が野本誠二の戸籍請求を行う。
そうすると、野本誠二の母親として「クマ」が記載している事が判明。
これで、「クマ」の生年が判明
また、「クマ」の両親の名前も判明してもう1世代遡ることが出来ました。
野本誠二は直系尊属ではありませんが、直系尊属である「クマ」が記載されていますので請求可能です。
このようにして、旧土地台帳を請求根拠として戸籍を請求することが可能です。
本来であれば、野本三郎、クマは夫婦ですので、たとえ三郎が亡くなっていても、息子の戸籍に母親として「クマ」は記載されています。
通常では戸籍係の方も「三郎さんの息子である誠二さんが戸主のなかに母親としてクマがいましたよ」
と言ってくれても問題ないと思われます。
しかし、融通の利かない役場の場合は直系尊属が証明出来ないということで交付されない場合もあります。
この事例はその請求方法になります。
旧土地台帳の相続を根拠として、家督相続者である息子が戸主の戸籍を請求。
そして、その中に「戸主の母」として記載されている「クマ」を確認する方法です。
事例2
戸主が大内豊松の戸籍があります。
よく見ると実は養子で豊松は檜山平助の弟だと判明しました。
そこで兄である檜山平助が戸主である戸籍を請求するも交付されませんでした。
戸籍をよく見ると、明治14年に養子となっており、戸主が檜山平助の戸籍(明治19年戸籍)には弟の豊松はすでに他家に養子にいっており記載されていません。
「檜山平助」の戸籍はありますが、その続柄を戸籍で確認出来ないので交付不可になりました。
※不可理由は同姓同名の他の人物の可能性を否定出来ない為。
同じ村で同じ時代に同姓同名の人物がいるというということはまず無いと思います。
まあ、このレベルの案件でしたら、決裁権のある人間の決裁で交付も可能な案件です。
しかし、頑なに交付不可にしました。
役場としては
最低でも二点の一致が必要と言ってました。
●氏名+本籍地
●氏名+生年月日
●氏名+命日
などです。
しかし
●明治19年戸籍ですのでそもそも本籍地が特定できません。
※番地制度が出来るのは明治31年戸籍から。
●生年月日や命日が分かれば苦労しません。
万事休すです・・・・・
しかし、ここでも諦めません。
旧土地台帳から、檜山平助が記載されている旧土地台帳を発見。
地目が「宅地」の場所の番地で請求。
役場としては、二点の一致が確認できたので、戸主が檜山平助の戸籍を交付しました。
無事交付されて戸主が「檜山平助」の戸籍を確認すると。
両親の名前がが判明しました。
しかも母親が記載されていましたので、その生年月日も判明しました。
この事例からも分かるように、戸籍が存在している可能性が高いのであれば、旧土地台帳という公文書を利用して公式な請求理由として通る理論武装をします。
本来であれば、明治19年戸籍の出来事になります。
つまり明治19年戸籍では記載されていない事項になります。
「戸籍取扱手続」明治19年10月16日内務省令第22号
「戸籍登記書式等」同日内務省訓令第20号
内務省令第22号にて記載の仕方を示し、訓令第20号にてきちんと省令22号を守って記載するように指示されています。
これを根拠に役場の戸籍係には前提に繋がりを認定しなければならないのでは無いか?と確認します。
簡単に言えば
明治時代には住所の番地を記載する義務が無かったので記載していない、よって戸籍係のほうで繋がりを認定して発行すればいい。
ということです。
これを根拠に先方の役場に探していただき交付してもらうのが一番早いと思います。
しかし、どうにも融通が利かない場合はこのように旧土地台帳を利用した請求方法もあります。
本来であれば日本全国統一した交付にならないといけませんが、そうにはなりません。
●非常にこちらの意図を理解して、法的根拠のなかで確実に交付して頂ける役場。
●難色を示すが、こちらがしっかりと説明をすることで理解された交付して頂ける役場。
そして
●融通が全く利かずに決裁権のある決裁者が交付を許可すれば問題無い案件でも交付不可にする役場。
このような役場にあたった場合には上記の旧土地台帳という公的書類を利用しながら戸籍の請求をしてみてはどうでしょうか?
非常に稀な事例と思ってしまいがちですが、実はこのような事例は多いです。
特に地方で田舎の役場の場合は融通が利かない役場も一定の割合でいます。
しかし、そこで諦めては終わりです。
なにか他に方法がないか?を確認し実行するかしないかで今後の先祖探しの進展に大きく左右されます。
戸籍の請求は先祖探しの初歩になりますので、ここでしっかりと請求可能なものは100%交付していただきましょう。
【まとめ】
●戸籍の請求では直系尊属が判明出来れば請求可能。
●明治19年以前に分家や嫁いだ場合は根拠を示すことが出来ないので融通の利かない役場は、交付不可になる場合がある。
●その場合は公的文書である旧土地台帳で関係を証明してから再度役場に請求してみる。
公開日2020/08/01
更新日2021/09/12