はじめに
先祖探しのイメージとして、皆さんはどんな感じを想像しているでしょうか?
日本昔話のようなイメージでは?
●山里で田畑を耕作している農民。
●雪深きところでお地蔵さんがいるようなイメージ。
●深淵の沼、大雨の川
しかし日本には津々浦々ということばがあるように、周りをぐるっと海岸線に囲まれています。
さらに、島も多く陸から少しはなれた島、離島に住んでいた先祖も多いのではないでしょうか?
特に瀬戸内海の島々には昔から多くの島民が半農半漁で生活していたと考えられます。
先祖の中には母方の曽祖母は●●というところから嫁に来たと伝承がありそこを詳しく調査したら崖岸線のある村だった、島であったなど案外あると思います。
先祖調査のセオリーでは通常以下のようになります。
●戸籍で本籍を調べて。
●旧土地台帳で同姓の方がいないか確認。
●本家がいれば伺い。
※分からなければ手紙を書いて特定する。
●菩提寺があれば古い先祖が過去帳に記載されていないか確認のお願い。
それで通常は終わります。
しかし、
当時の先祖がどのような生活をしていたのか?
その生業はなんだったのか?
6代前の先祖が見た光景はどのようなものだったのか?
などを想像、推測することで先祖の生き様を深掘りすることが出来ます。
そんなこと言ってもよく分からないな~と思う方が多いと思います。
しかし、日本という国は多くの資料が残っています。
これらを利用しながら200年前の海岸線、いや500年前の海岸線を推測して、当時先祖が見ていた海岸線を再現してみませんか?
やり方は簡単です。
国土地理院のサイトにあるいくつかのサイトを利用してみることです。
また、海抜を調整できるサイトもありますので、こちらも活用できればより再現性が高まります。
ここからは例を示していきます。
まずは国土地理院のサイトにいきます。
現在の地形を確認します。
こちらで現在の地形図、海岸線がどのようになっているかを理解しておきます。
次に
地図・空中写真閲覧サービスを確認します。
そして、戦後すぐの海岸線を確認します。
戦後すぐでも現在の海岸線よりも奥にあることがあります。
特に県庁所在地付近の海岸線は戦後大規模開発で埋め立てられていますのでその前が分かるのにはとても便利です。
さらに、オックスフォード大学のサイトから明治時代の地形図も確認します。
航空写真と大きくは変わらないかもしれませんが、地形図の方が詳細ですのでこちらも確認します。
そしてこの地が、江戸時代にはどのような地形図でどのような村があったかを確認します。
伊能図からのアプローチ
江戸時代の地図と言えば伊能図になります。
先祖が島や海岸線に住んでいる場合は伊能図が役にたつかもしれません。
当時の海岸線はいまよりも奥だと思われますので、当時のイメージが湧きます。
山の中の場合もかなり奥まったところまで村名が記載されています。
先祖のことは分かりませんが、先祖の住んでいたところは分かります。 pic.twitter.com/aK5sLSMByo— 先祖探し 悠久の時を越えて (@gosenzo2) October 2, 2020
現在の海岸線と200年前の海岸線を見比べます。
上記の資料を活用しながら、現在と200年前の海岸線を比較検討してみるとかなり違うことが分かると思います。
海抜が分かる図も国土地理院のサイトにありますのでこちらも利用します。
そうすると、海岸線の殆どが海抜数メートルだと感覚的に分かります。
なるほど、伊能図が出来た1821年頃は、ほぼ平地は無かったのか。
その後200年かけて現在のような土地になったということか。画像は全て国土地理院から。
国土地理院のサイト恐るべし!! pic.twitter.com/tKQIuzB7D1— 先祖探し 悠久の時を越えて (@gosenzo2) September 19, 2020
実例
では、これをふまえて各地区を調べてみましょう。
山口県山口湾
赤枠のところが当時海でした。
広島県広島湾
200年前は殆ど海だった分かります。
神奈川県横浜港
湾が奥まっていることが分かります。
このようにして、自分の先祖が住んでいるところをいろんな、地形図、航空写真、伊能図を組み合わせて確認すれば当時の様子が浮かび上がってきます。
200年前海だったところの地名を確認すると、海や水、舟に関わる地名が発見できるかもしれません。
本籍地や旧土地台帳にそのような地名が発見できれば新発見になります。
地名辞典からのアプローチ
さてこれに、参考図書を確認していけば深く情報を入手できるでしょう。
これらをベースにしてから、地元の市町村史などに目を通すと全く違うイメージになるかもしれません。
情報を得てから見ると景色が全く違います。
更に海抜を調整出来るサイトがあります。
これで海抜を調整してみましょう。
これは海抜を調整するサイトです。
感覚的には
+3~5m位に調整すると戦国時代~江戸初期
+7m位にすると鎌倉時代~室町時代
+9m位にすると古墳時代~平安初期
位の海岸線ではと思っています。長年の干拓で現在の土地になっていると考えます。
— 先祖探し 悠久の時を越えて (@gosenzo2) October 1, 2020
感覚的には
+3~5m位に調整すると戦国時代~江戸初期
+7m位にすると鎌倉時代~室町時代
+9m位にすると古墳時代~平安初期 位の海岸線ではと思っています。
あくまでイメージですので地域によっては全く違うかもしれませんが、江戸時代を通じて干拓で広がった場所も少なくはありません。
岡山平野は江戸時代を通じて干拓されました。
新潟平野も水との戦いで新田開発をしております。
先祖が新潟の方でしたら、新田開発でこの地に来たという伝承があるかもしれません。
筑後平野も鎌倉時代から有明海を干拓していった歴史があります。
広島平野も奥まで海岸が迫っていました。
今では山の中の城主が警固衆(舟を扱う軍団)だったという事実があります。
このように自宅に居ながら、インターネットを駆使して当時の地形図を再現、そして、戸籍、位牌、お墓情報から先祖情報をそこに重ね合わせると、新発見がきっとあります。
先祖探しはただ単に遡って先祖の名前を発見することだけではありません、その1人1人の人生にスポットを浴びせ、当時生きていた環境、時代背景などもリンクさせて由来書を作成すればとても重みのある資料になることは間違いありません。
【まとめ】
●自分の先祖が海岸線に住んでいたのであれば、国土地理院のサイトから現在の地形図や航空写真を確認する。
●オックスフォード大学の明治時代の地形図があればそちらも確認する、わずか100年でも海岸線が大きく変わっている地域がある。
●最後に伊能図を確認すると、約200前のリアルな地図があり当時の様子が分かる。
●海抜を調整できるサイトからは、更に遡った鎌倉時代から室町時代の推定海岸線も確認することが可能。
●これらを利用して、先祖の住んでいたところの確認が出来れば、その先祖1人1人を深く理解することが出来る。
公開日2020/10/04
更新日2021/09/13